WEB広告代理店の変更・乗り換えの「隠れたリスク」とは?失敗を防ぐチェックポイントを解説

現在のWEB広告運用に満足がいかず、代理店のリプレイス(乗り換え)を検討されている担当者は多いでしょう。しかし、安易な乗り換えは「一時的な成果の急落」を招く恐れがあります。本記事では、WEB業界の視点から、リプレイス時に必ず知っておくべきリスクと回避策を専門用語を交えて解説します。


1. 運用パフォーマンスの一時的な低下リスク

新代理店への移行直後は、どんなに優秀な運用者でも「成果の停滞」が発生する可能性があります。その主な理由は以下の通りです。


  • 機械学習の初期化
    モダンな運用型広告では、媒体(GoogleやMeta等)のAIがコンバージョンデータを学習して最適化を行います。アカウントを新設する場合、この「学習データ」がゼロになるため、CPA(顧客獲得単価)が一時的に高騰します。

    【用語解説】機械学習(Machine Learning)
    過去の配信結果から「どのようなユーザーが成約しやすいか」をAIが自動で学習し、入札価格や配信先を最適化する仕組み。
  • 初動のROI(投資対効果)悪化
    新しいアカウント構造の構築や、クリエイティブ(バナーや広告文)の検証期間が必要なため、移行後1〜2ヶ月はパフォーマンスが不安定になりがちです。


2. データ・アカウントの引き継ぎに関するトラブル

実は最も大きなリスクが、これまで積み上げてきた「データ資産」の消失です。


  • アカウントの所有権問題
    代理店名義のアカウントを使用している場合、解約時に譲渡が認められないケースがあります。この場合、過去の配信実績や蓄積された「リマーケティングリスト」が全て消滅します。

    【用語解説】リマーケティング(リターゲティング)
    一度サイトを訪れたユーザーを追跡して広告を表示する手法。蓄積されたユーザーリストは重要な資産です。
  • タグ・計測設定の不整合
    GTMなどの設定を引き継げない場合、コンバージョンの計測定義が旧代理店時代とズレてしまい、正しい効果測定ができなくなる「データ乖離」のリスクがあります。

    【用語解説】GTM(Googleタグマネージャー)
    WEBサイト上の各種計測タグを一括管理するツール。複雑な設定ほど移行時のミスが起きやすい。


3. 知見のブラックボックス化とスイッチングコスト

目に見えない「ナレッジ」の流出も、大きな損失に繋がります。

  • 過去の「負けパターン」の再踏襲
    前代理店がどのようなABテストを行い、何が失敗したのかというデータ(ブラックボックス化された知見)が共有されないと、新代理店が同じ失敗を繰り返す無駄が発生します。
  • スイッチングコストの発生
    定例会の設定、コミュニケーションツールの連携、ビジネス理解のためのミーティングなど、担当者の工数負荷(リソース消費)が一時的に増大します。


リスクを回避し、乗り換えを成功させるポイント

リスクをゼロにはできませんが、以下の準備で最小限に抑えることが可能です。

  • アカウントの自社所有化:契約前に、アカウント譲渡が可能か、あるいは自社名義で運用するかを必ず確認する。
  • パラレル運用の実施:全予算を一気に移さず、旧代理店と並行して新代理店をテスト運用する期間を設ける。
  • 定性データの言語化:数値化できない顧客の反応や業界の商習慣を「引き継ぎ資料」として新代理店に渡す。

代理店の乗り換えは、リスクを正しく理解していれば、現状を打破する強力な一手となります。貴社にとって最適なタイミングと手法を見極めましょう。


この記事を書いた人



上級ウェブ解析士 水間 祐平

上級ウェブ解析士 水間 祐平
出身:千葉県千葉市
資格:上級ウェブ解析士/産業カウンセラー
趣味:映画鑑賞、スポーツ観戦、草野球

中小企業を専門に合計400サイト以上のホームページの運用・分析を担当。現在も常時100サイト以上のアクセス解析を行い、数値データから導き出す改善提案で、多くの成功事例を生み出している。また、企業のWeb・広報担当者向けにアクセス解析のセミナー研修を行っている。